上司が職場で行う部下育成の仕方で企業の人材育成が決まる
上司が部下育成する場合、先ずなにをするべきか
リーダーシップ研修やマネジメントに関する研修を担当すると、部下育成を意識してしっかり行っている人を時々見かけます。
しかし、たいていの場合部下育成しているつもりの方が多いのが実情です。
ではその差がどこにあるのか、ある質問を投げかけてその返答を聞くとはっきりします。
私は研修講師として活動して27年目に入りました。
最近は世の中の流れに沿って、企業も人材育成に関する予算はかつてのように潤沢に確保されていません。
従って限られた予算の中で限られた社員研修を行う傾向が強いので3時間の研修、1日の研修がほとんどです。
3日間の管理職研修を行う企業様でも毎日定時になると研修も終了し、夕食後まで研修を行う企業はとても少なくなりました。
すると、受講者の方々とのコミュニケーションの密度が薄くなってしまいます。
受講者の方々が、どのような考え方をお持ちなのか、部下が何人いるのか、どのような職務に就いているのかなかなか知ることが出来ません。
即ち、受講者の事が分からなければ研修講師の独りよがりの研修になってしまいます。
本題に戻りまして、部下育成をしっかりしているかどうか見極める質問とは「部下一人一人の事をきちんと把握していますか?」なんです。
「把握しています」と答える人でも、部下の仕事上の課題や趣味特技は答えられても家族構成の詳細や潜在的に悩んでいることなどのプライバシーに関することまでは把握していません。
当然、個人情報に関わることは細心の注意を払わなければならないことです。
しかし、細かなことまで知らずにいると部下に対して言ってはいけないことを言ってしまう場合があります。
事実、上司の一言で裁判沙汰や双方の弁護士同志の話し合いに発展した例もあります。
従って、部下育成する立場にある人は部下一人一人の細かなことまで知る努力をすることが部下育成の第一歩と私は感じています。
軍隊に「伍長」という階級があります。古くは中国の歴史の中に初めて登場する階級で、文字通り五人の長という意味です。
戦いの場面では、指揮官は5人の部下を統制するのが限界というのが定説です。
しかし、企業によっては部下10人、20人抱えている管理職は普通にいます。
すると、「あなた誰?」的な部下がいてもおかしくありません。
これでは正しい部下育成は難しくなります。
だからと言って部下に個別に「あなたの家族構成は」「借金はある」とストレーに聞くわけにもいきません。
昔は、「よし、飲みに行くか」とお酒を飲むことでコミュニケーションを図り、仕事ばかりか私生活のことまで相談できるような場がありました。
今は、働き方改革・各種ハラスメントやジェネレーションギャップなど様々な要因が重なり合って、コミュニケーションを取ることにも上司は気を遣わなければならない時代です。
ローマは一日にしてならずではありませんが、部下育成も研修を受講したからと言って直ぐに成功するものではありません。
もちろん、部下育成のポイントなどを知らないより知っていた方がよいです。
しかし、それ以上に大切なことは普段からのコミュニケーションです。よく話を聞くことです。
何気ない話の中から、部下一人一人の事を知る努力を始めることです。
また、話を聞けば聞いただけ部下が潜在的に抱えている大小さまざまな問題に気がつくこともできます。
たいそうなことより、部下育成ではコミュニケーションの頻度を多くし、内容を深めていきましょう。