企業が行う人材育成のプロセスでお客様の存在が忘れ去られている事実
お客様の存在を無視した人材育成は失敗する
一部の人を除いて、仕事をする限り必ずお客様の存在を考える場面に遭遇します。
営業や販売などのサービス業ではほぼ毎日のようにお客様に直面します。
しかし、研究開発部門や総務部門などの間接部門で仕事をしているとお客様に直面しない日もあります。
さらには、お客様の存在を全く考慮しないような部署で仕事に就いている人もいます。
あるとても有名なメーカーの部長とお話をする機会がありました。
その部長、悪気はなかったと思いますが「うちの社員はお客のいいなりなんですよ」と部下の仕事振りを真剣に悩んでいました。
普段思っていることだからポンポンと出てきた言葉と私は感じました。
恐らく、この部長はお客様の存在を正しく理解していません。
なぜならお客様のご要望・ご意見に真摯に取り組んで行くことが今の時代では求められます。
マーケティングの用語でいうところの「プロダクトアウト」から「マーケットイン」や「カスタマーイン」の時代だからです。
高度経済成長の時代やバブルの全盛期は違っていました。
お客様の存在を考えなくても売れる時代でした。
極端に言うと「欲しいなら買いな」的な商売がまかり通る世の中でした。
しかし、今の時代はお客様の存在をないがしろにしているとお客様がその商品やサービスを見向きもしなくなります。
特にSNSによる口コミでうわさが加速度的に拡がっていってしまいます。そうなってはもう手遅れです。
それでは予防的措置として何ができるのか。
企業の中で人材育成を考える場合、お客様がいるから自分たちの仕事が存在していることを徹底するべきです。
しかし、あまりにも当たり前のことすぎて忘れられているのが現状です。
だからこそ敢えて「お客様の存在」を考えさせるべきなんです。
弊社が行っている研修の中で、3日間の初任管理職研修があります。
3日目の午前中は全て「お客様の存在」についての研修プログラムを構成してあります。
管理職の任務、部下とのコミュニケーション、部下育成の手法と進めてきて「あなたの部門にとってお客様とはどの様な存在でしょうか」という問いかけからスタートします。
「うるさい存在」
「文句ばかり言う存在」
「お金をくれる存在」
と思考が浅い段階ではこのような雑談レベルの内容が多く出てきます。
次第に核心に迫ってくと「忘れていたなぁ」「失礼なことをしていた」「何か勘違いしていた」と反省の弁が聞こえてきます。
鉄は熱いうちに打ちの言葉通り、新入社員研修の早い段階から徹底していくべきです。
役員クラスの幹部研修でも時々投げかけてみても効果があります。
だいたい企業で不祥事が起きて、原因究明をしてくとお客様の存在を無視した仕事振りに原因の一端があったりします。
備えれば憂いなしです。
お客様に対しては「ありがとうございます」の気持ちです。
お客様があること自体がむずかしいことなんです。
だから「有り難うございます」の気持ちを人材育成の中に入れていくべきです。